語義
シュティリアルテは、オーストリアのシュタイアマルク州の州都グラーツを中心に開催される夏の音楽祭で、「styriarte」は、シュタイアマルクを表すラテン語の「styria」と、芸術を意味するイタリア語「arte」を組み合わせた造語です。
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性革命がまだ憤慨の念をあまねく人々に引き起こした1960年代のあの幸せに満ちた時代を思い出す時、私たちは一種の懐旧の念にかられます。当時の若者たちがあらゆるタブーを破って手に入れた自由は、まったく新しく想像もできないもののように思えました。しかし、彼らの革命的反抗は、本当に新しいものだったのでしょうか。身を寄せ合い、ランナーやシューベルトのワルツを踊りながら、ビーダーマイアー時代のウィーンの若者たちは、何か道徳的に特別なことをしたのでしょうか。ニコラウス・アーノンクールは最近になってようやく彼のCDでこの舞踏の革命とそれに付随する道徳規範の喪失現象に名声の息吹を吹き込みました。そして今年のシュティリアルテ音楽祭では、スリリングかつ官能的な、そして破壊的なニュアンスをもってこれらを純粋な音楽鑑賞の喜びに変えてくれることでしょう。 以上が、2013年シュティリアルテのプログラムテーマのすべてであるといえるでしょう。つまりは、「一般大衆の喜び、あるいは逆に強烈な反感をともない、より自由奔放なトレンドが音楽界に火炎を放った時代」であります。音楽祭全体を貫く今年のテーマは、タブーではなくなったものの、予期できない結果を生じるかも知れない「愛」、そして「危険な関係」です。 |
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もちろん、その中でパリは中心的な役割を果たしています。愛の都パリは今日も、ジャック・オッフェンバックの時代にも、「純潔」という点で名声を得てはいません。フランス第二帝政時代に、ケルンからの亡命者オッフェンバックは、当時の男女関係を赤裸々に描いてみせます。特に痛烈なのは、プレイボーイとして悪名高い青ひげの騎士を描いたオペレッタ「青ひげ」です。このオペレッタにおいて、愛は文字通り混沌なのです。今年のシュティリアルテオペライベントでは、ニコラウス・アルノンクールが、オッフェンバックの傑作を、編曲バージョンで指揮します。パリ。この町は、コデルロス·ド·ラクロが小説「危険な関係」を書いた場所であり、今回のシュティリアルテのテーマに深く関わっています。パリではルイ15世の公妾ポンパドゥール夫人の同時代人が情事にうつつを抜かし、ついにはイタリア人カサノヴァが本物の情事のあり方を指南します。パリ在住のアストル・ピアソラは、ブエノスアイレスの場末で生まれたタンゴを芸術の域に高めることは、恥ずべきことではないのだと思い始めていました。パリでフランツ・リストは、マリー・ダグー伯爵夫人と出会い、深い恋に落ちます。これら全ての愛にまつわる出来事は、音楽の中で不朽の名声を与えられてきたのです。他より抜きんでて優れた音楽作品を創り出すために、愛が必要不可欠な要素であるならば、密会もまたポジティブな貢献をしていると判断されるべきではないでしょうか。新しいコンサート形式のSOAPの演目についても、カサノヴァの名声からオッフェンバックの風刺劇に至るまで、今年のテーマは豊かなインスピレーションを与えてくれます。肉体的快楽はいたる所に見出されるものの、危険はあらゆる場所に潜んでいるのです。ヨーゼフ・ハイドンは妻と二人の愛人の間を密会が明るみにでないように常に危険を背中合わせで暮らさなければなりませんでした。イタリア人のアレッサンドロ・ストラデッラは、まさに情事のために自分自身の人生すべてを代償として払わなければなりませんでした。まさに愛は、非常に危険なものにもなりえるのです。そしてそれこそが、アーサー・シュニッツラーからインゲボルグ・バッハマンまで、数多くの作家たちが明らかにしてきたことでありました。新しいSPÄTLESEnプログラムでは、このような内容をドイツ語の文学作品の朗読から楽しむことができます。*SPÄTLESEn:今年からの新しいプログラム形式で、夜にゆったりと文学作品の朗読を聞いて楽しむというもの。SPÄTLESEそのものは高級な遅摘みブドウから作られるワインの意味がありますが、そのニュアンスをもたせつつ同時にSPÄT(夜遅くに)LESEn(読む:ドイツ語のlesen)を1つの語にした造語でもあります。
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1985年に創立されたシュティリアルテ音楽祭(以下、シュティリアルテ)は、 ヨハン・セバスティアン・バッハをフィーチャーして開催され、その後モンテ ヴェルディ、ハイドン、シューベルト、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーンといった個々の作曲家に焦点を当てて開催されてきました。1992 年からは「夏の夜の夢」、「空間と響き」、「断片とつながり」、「神話の足跡」、「とにかくクラシックに!」といったテーマを探求してきました。そして 1998/9年には「失楽園?」「教えておくれ、愛よ」のテーマで、壮大なシリーズが新たに始められ、2003年のテーマ「音楽の力」とともに締めくくられました。その後さらに、テーマとして社会の根源的説明モデルを問いかけることを始め、2004年の「時から時へ」、「官能」(2005年)、「ようやく 幸せに」(2006年)へと続きます。その後「ヨーロッパ」(2007年)、「水に」(2008年)、「人間の尊厳」(2009年)のテーマで開催されました。また、2010年は「祖国」をテーマとし、とりわけオーストリア人にとっての祖国に焦点を当てて音楽祭が開催されています。2011年には、音楽における「易しいことは難しい」というテーマを取り上げました。今年2012年にはシュティリアルテは「家族の人間模様」の解明を試みます。 |
シュティリアルテは、当初は先駆的指揮者ニコラウス・アーノンクールと彼の故郷であるグラーツとを密接に結び付けるために創設されました。アーノンクールの卓越した芸術観こそが彼自身を世界的なスターに作り上げたといえますが、シュティリアルテにおけるコンサートやイベントもアーノンクールの芸術観に則って企画されています。今日のシュティリアルテは私たちに受け継がれていながらも長きにわたり忘れ去られていた多様な音楽遺産の再発見を可能にしてくれ、また古楽、あるいは中世からロマン派時代に至る音楽作品への多彩かつ刺激的なアプローチを反映しています。
ニコラウス・アーノンクールに導かれた独創的な古楽演奏アンサンブルであるコンツェントゥス・ムジクス・ウィーンと並び、非常にダイナミックな演奏をすることで知られるヨーロッパ室内管弦楽団がシュティリアルテの主要なアンサンブル団体となっています。また、ジョルディ・サヴァール、モザイク・カルテット、アルモニコ・トリブート・アウストリア、イル・ジャルディーノ・アルモニコなど、当代一流の古楽演奏家たちも常連の演奏家です。
シュティリアルテの素晴らしい点として、コンサートが開催される環境の魅惑的な雰囲気が挙げられるでしょう。シュタイアマルク州の州都グラーツの旧市街は世界遺産に登録されており、きわめて良好な保存状態を誇る町の随所に見られる歴史的に有名な建造物は、音楽祭とともに忘れがたい思い出として残ることでしょう。
